Jacques Durandはフランス出身のデザイナー。

オプティシャンとしてそのキャリアをスタートしたが、眼鏡への溢れる情熱に引かれるようにしてデザイン・製造・流通のフィールドへと進出していった。
1978年には、今や大御所アイウェアブランドとなった、Alain Mikliの立ち上げに参画。
当時まだたった4人しかスタッフがいなかった会社で、製造からマーケティングやセールスまで幅広い分野を担当し、ブランド成功の立役者となった。
1996年から2002年にかけては、Starck Eyesのプロダクトマネージャーとして活躍。
Alain MikliとStarck Eyes、両ブランドのコラボレーション実現のきっかけとしての役割も果たした。
2002年、実績を積み重ねたのち、時機が来たとの確信のもと独立しJDL(Jacques Durand Lunetier)を設立。
様々なブランドからオファーを受けてアイウェアデザインを提供していた。
中でもデザイナー本人が最も印象的だったと語るのは、フランスの高級車ブランドBugattiとのプロジェクトだという。
異なるジャンルの両者の情熱が、ハイクオリティなアイウェアとして見事に結実したコレクションとなった。
こうして数々のコラボレーションプロジェクトの成功を経て、ついにJacquesは彼自身のこれまでの全ての経験と情熱を注いだ、彼自身のコレクションを創ることに集中することになる。
2009年、彼の名を冠したブランドJacques Durandは、アイウェアの概念への新しいアプローチを持つ独自のブランドとしてスタートした。
そして2012年、JDLは拠点をイタリアに移し、JDO(Jacques Durand Occhiali)に改組。
現在は北イタリアの街、Maggioreに自社のアトリエを構え、デザインから製造、流通までを一貫した体制で行い、魅力的なコレクションを生み出し続けている。

クールなモダンさと、あたたかみのあるクラシカルさの両面を持ち合わせた、時流に左右されないデザイン。
シンプルであることを追求することによって逆説的に独創性を引き出すことに成功している。
ボリューミーでインパクトのあるデザインでありながら、あくまでも上品な雰囲気を湛えており、意外なほどさりげなく掛ける人の魅力を引き出してくれる。

とりわけ大きな魅力のひとつが表面に施された美しい艶消し処理。
アクセサリーに見られるヘアラインのような繊細な仕上げは、自社のアトリエで働くジュエリー製作出身の職人たちが熟練の技術で金属加工用のブラシを用いて一点一点すべて手作業で行うことで実現されている。

一方で、「アイウェアは”品質”と”掛け心地”が基本だ」という信念のもと、この道35年の経験と専門知識を満載したこだわりが随所に見られる。
素材として用いるのは、しなやかな強度と美しい発色が魅力のイタリア・マツケリ社製の高品質なアセテートのみ。
5mm厚の生地を用いたフロント部は堅牢で変形しにくい構造となっており、ブリッジも含めフラットにデザインされた構造はアセテートの美しさを最大化し、同時に掛ける人の目鼻立ちを引き立たせて見せる。
また、ヒンジの金具はドイツのOBE社製で大変緩みにくいものとなっている。

モデル名やブランド名をテンプルの内側側面ではなく、下部に刻印することも、掛ける人を一番の主役と考えてのこと。
さらには、ネジひとつからレザーケースに至るまですべてのパーツに対して素材の原産地と製作地が記された保証カードを添付していることが、自身の製品への誠実さを物語っている。