メトロノームはデザイナー、岩本 美生が創設したブランドである。
岩本は日本でデザイナー、スタイリストとして順風満帆な生活を送っていたが、2014年初頭のある日、交通事故に遭い、左手に深刻なダメージを負ってしまった。
また時を同じくして、仲間の裏切りにあった。
福井県鯖江市で修行を積み、メガネのサンプル作成技師として名を馳せた岩本にとって、左手のダメージは収入には深刻な物であった。
岩本はその時に、かなり精神的ダメージを負った。しかしこのままではいけない、日本にいると嫌な思いが駆け巡る。そう思い、若い時果たせなかった思いから、持ち合わせの金を持ち世界に旅に出た。
アジアは中国、タイ、ベトナム、マレーシア、カンボジア、インドネシア。
インド。
アメリカはニューヨーク。
オーストラリアはシドニー、メルボルン。
その時に、特にアジアで思ったことは、
「これからこの国たちは、大きな工場地帯になるであろう。その人たちに日本の縫製、メガネの作成技術を伝えたら、素晴らしい物が出来上がるのではないか?日本は今深刻な職人の後継者不足に悩まされている。その人たちを日本に燻らせておくより、世界に出して技術を広げた方が圧倒的に世のためになるのではないか?」
岩本は帰国後、早速有志たちを集め、資金を調達し、ベトナム、タイ、マレーシアにまずは工場を建設し、日本人技師を派遣、技術を育成することから始めた。
そしてとうとう2016年初頭、ベトナムのメガネ工場がまず稼働した。
ある日、岩本が仲のいいミュージシャンと飲んでいた時、彼は岩本にこう言った。
「もう一度、ブランドやってみたらどうかな?俺たちがミュージックアルバムを作るようにさ、メガネでアルバムを作っていくんだよ。それがデザイナーの仕事じゃないか?裏方に回るにはまだ早い。」
その言葉を聞き、考えた末にできたブランドが、この”メトロノーム”である。
言葉通り、まずは初心に戻りメガネから開始した。
毎期コレクションごとに、ミュージックアルバムのように考え、作成したもの一つ一つにタイトル、歌詞のような説明文がある。キーとテンポがある。キーはA~Gまで、テンポは42~220まで。まるで一つの曲のようにできている。
“METRONOME®”の由来は、旅行中、左手のリハビリのために持っていった、小さなアコースティックギターと、日本製の古いメトロノーム。ギターは途中で何回も壊れ