前職を辞め、リフレッシュのためにフィリピンへ旅したおり、土産屋で売られていた手作りのテーブルマットやカゴを目にした時、ふと“作り手の賃金はいくらなのだろう” という思いがよぎる。価格から逆算すると、いくらももらってないはず。その時感じた、“私がデザインしたものを直接作ってもらい、私が販売ルートを開拓すれば、作り手にもきちんと支払いが出来るビジネスができるのではないか” “天然素材ラフィアを使用して手編みのバッグを作ってみたい” その思いが「スルシィ」バッグブランドを立ち上げるきっかけでした。
先のことをよく考えず、セブ島とボホール島でわずか10数人で始めた編み物のトレーニング。編み物の初心者である女性たちにかぎ針の持ち方から編み図の説明など、ゼロから手ほどきをしたものの、教え始めた当時はなかなかこちらの希望するバッグができ上がらず、私の気力や体力、資金が続かないかもしれないと、不安に思ったことも一度や二度ではありません。
“生産者に対する責任を負ってしまった以上、もう後戻りはできない” “いいモノを作ればきっとお客様に分かってもらえる” “頑張れば自ずと道は開ける”このブレない思いと信念だけで、女性たちに技術の指導を続ける。一方で、なんの疑いもなくついて来てくれる彼女たちの頑張りと笑顔に支えられながら、一歩一歩「スルシィ」バッグはカタチになってきたように思います。
徐々に彼女たちと信頼関係を築き、「きちんと編めば、 高い工賃につながる」ということが伝わってからは、技術の習得もスピードアップ、日本の百貨店で売れるレベルになる。品質の確立と供給の見通しがついた2011年11月スルシィ設立。バッグのデザイナーも兼任し、日本とフィリピンを行き来している。